「ポーターのひとりごと」その3

現世界の中で未踏の場所を探すのが私の一番の楽しみです。
それは遠い異国や壮大な自然以外にもあるものです。たとえば東近江にも。
身近な自然だからこそ見つけた時の喜びはひとしお。
鈴鹿の山々でそんなことばかりやっていたある日、とても美しい花崗岩の岩塔に出会いました。


場所は県境の縦走路から少し外れた場所。石楠花が生息し人が踏み込みにくくひっそりしていた。
高さ20mほどでそう高くはないが四方が切り立っていて植生のない剥き出しの花崗岩。
下からみても天辺に植生を確認できない。
どう考えても人間は到達していさそうどころか、空を飛べない生き物がその天辺に辿り着くことはこの岩塔が誕生してから無いであろう。
これは面白い。ひとまず場所を忘れないように記憶して後日装備を整え再訪した。


クライミングで到達を試みたが厳しく、登りきった後の下降も考えるとリスク高い。
幸い山側は高さが低くなっているのでロープの末端にハンマーをくくりつけ天辺を通過して反対側に放り投げることができそう。
何度も失敗しても諦めずスローイングを繰り返すと上手い具合に成功した。
ハンマーの重みでゆるゆると反対側に落ちていった。
慎重に回収して近くのしっかりした立ち木にロープを固定。元にもどり岩の天辺からロープが外れないか慎重に荷重をかけてみる。
ちょつとスリリングだが行けそう。アッセンダーをロープに装着して祈るように登り始めた。誰も行ったことのない世界へ。
未踏の花崗岩を触ることが嬉しい。
ほどなくして岩塔の天辺に這い上がった。
そこは一切土のない花崗岩。人間や哺乳類にとって初めて到達したことは明らかなところだった。


美しい花崗岩の模様。美しく蒼い空。宇宙との繋がりを感じた。
これまでの体験の中でもこんな感じは初めて。


その後は仲間と何度か訪れて3本のルートを拓いた。「SORA」「KUMO」「GINGA」なかでもギンガの完登は生涯でも会心の登攀を楽しめました。
また鈴鹿の山々で未踏の場所を探して見ようと思います。

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