人と自然に優しい登山道整備
ナマステ!
山を歩いていると、丸太などで作られた階段をよく見かけます。
こうした階段も、作られたばかりの頃は歩きやすいのですが、長い年月の中で少しずつ傷んでいきます。
その大きな原因のひとつが、「水」です。
雨が降ると、登山道や階段の踏み面に水が溜まります。そして、その水が流れ出す時に少しずつ土も一緒に運んでいきます。

それを繰り返すうちに階段の周りの土が削られ、やがて階段が崩れたり、丸太などの工作物だけがハードルのように残ってしまったりします。

歩きにくくなった登山者は、その場所を避けて階段の脇を歩くようになります。
すると、本来の登山道ではなかった場所が踏まれ、新しい道ができ、登山道がどんどん広がっていきます。さらに周辺の植物まで踏まれ、植生を傷める原因にもなります。

登山道が水路のようになって土壌が侵食され、歩きにくくなった場所を避けることで登山道が複線化していく現象は、全国各地の山でも問題になっています。
水はどこから来て、どこへ行くのか
そこで私たちが取り入れているのが、「人と自然に優しい登山道整備工法」です。
これは「近自然登山道整備工法」の考え方を参考にしながら、私たちが活動する地域やフィールドに合わせて取り組んでいるものです。
大切にしているのは、単に「歩きやすい階段を作る」ことではありません。
まず現場をよく観察します。
雨が降った時、水はどこから来るのか。
どこを通って、どこへ流れていくのか。
人はどこに足を置き、どこを歩こうとするのか。
そこを考えることから登山道整備は始まります。
例えば階段を作る時も、横木を真っ直ぐ並べるのではなく、基本的には「ハの字」などに組み、水が一か所に溜まらず、緩やかに流れていくように工夫します。

水の流れを止めるのではなく、うまく逃がしてあげる。
これによって土が流されにくくなり、階段や登山道そのものが崩れていくことを抑えます。
また、階段を一律の幅や間隔で作らないことで、登山者が自分の歩幅に合わせて足を置く場所を選べるようになります。
水にとっても優しく、人にとっても歩きやすい。
そんな登山道を目指しています。
最終目標は「植生が戻ること」
そして、私たちが特に大切にしているのが、整備した場所に、やがて植物が戻ってくることです。
登山道整備というと、丸太や石を使って立派な階段を作ることが完成のように思われるかもしれません。
でも、それがゴールではありません。
土壌が安定し、植物が少しずつ戻り、その根がさらに土をつかんでくれる。
そして年月が経つにつれて、人工的に整備したものが周囲の自然の中へ馴染んでいく。
そこまでいって初めて、本当に「人と自然に優しい登山道」になっていくのだと思います。

その土地にあるものを活かす
「人と自然に優しい登山道整備工法」は、鈴鹿10座エコツアーガイドクラブが活動している鈴鹿10座エリアをはじめ、東近江市内のさまざまな場所で見られるようになってきました。

ただし、登山道整備には「これをやれば正解」というひとつの答えがあるわけではありません。
山によって地形も違えば、土質も違う。水の流れ方も、人の歩き方も違います。
できるだけその土地にある石や木などの材料を活かしながら、その場所を観察し、その場所に合った方法を考える。現場で臨機応変に対応する力が求められます。


私自身も、まだまだ試行錯誤の連続です。
施工した場所も「完成したから終わり」ではなく、その後の雨で水がどう流れたのか、土が流れていないか、植物が戻ってきているかを観察しながら、次の整備へつなげていきたいと思っています。
登山道整備・里山保全のご相談も
今、里山の登山道整備や保全活動では、
「活動する人が少なくなってきた」
「メンバーの高齢化が進んでいる」
「登山道を直したいけれど、どう直せばいいのか分からない」
といった悩みを抱えている地域や団体も多いのではないでしょうか。

登山道は、ただ歩くための「道」ではありません。
人が自然の中へ入っていくための場所であると同時に、その自然を守るための境界線でもあります。
人が歩きやすく、そして自然も回復していく登山道へ。
outdoor station まほろばでは、登山道整備や里山の保全活動などに関するご相談もお受けしています。
地域の山や里山でお困りのことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。



