ビンソンマシフ登山 備忘録DAY④SUMMIT DAY

2026年1月6日 気温−32℃

LCと比べると寒さは厳しかったものの、ダウンジャケットを着てシュラフに入れば、特に問題なく眠ることができました。

いつものように早朝、テントの外に出てみると、目の前には快晴の空が広がっていました。何より風が弱い。これは大きなポイントです。とはいえ寒さは相変わらず厳しく、不必要にテントの外で長居をする気にはなりませんでした。

9時頃、JBがテントを訪ねてきました。

「調子はどう? 明日も天気は良さそうだから、今日は休養日にしてもいいよ」

すぐ横でフェルナンドもその会話を聞いていました。

「全く問題ない。良くなった。120%!」

と答えました。身体に疲労感はありましたが、頭痛はすっかり消えていました。これまでの経験から、自分は標高4,800m〜5,300m付近に差しかかると頭痛が出やすい体質だと分かっています。極点に近いビンソンマシフでは、昨日がその大気濃度に相当していたんだと思います。そして、その標高帯を越えると順応が進み、頭痛が治まることも分かっていました。

何より、今日のこの天候を逃すのはあまりにも勿体ないと感じていました。

「では、行こう。朝食は10時だ」

そう言ってJBはテントを後にしました。

朝食は、食べやすく水分も摂れるようにラーメンにしました。するとケーシーから、

「まだ調子が悪いのか? ラーメンみたいなローカロリーなものを食べて」

と言われました。

ラーメンがローカロリーと言われたのは初めてで、思わず笑ってしまいました。すると、それを聞いていたミンマが、大きなソーセージを2本、ラーメンの中に放り込んでくれました。

本日の行程は、ハイキャンプ〜山頂〜ハイキャンプ。移動距離は約14km。

予定行動時間は約12時間です。山頂直下には多少の斜度と岩場のトラバースがありますが、全体的には昨日のような急坂もなく、危険箇所は少ないとのことでした。問題になるのは寒さと風。その対策をしっかりするように言われました。

11時30分、サミットプッシュ開始。

服装は、上半身が薄手のベースレイヤーにモンベルのトレイルアクションパーカ、下半身は厚手のベースレイヤー。その上にダウンスーツを着込みました。ヘルメットはハイキャンプに残置しました。

片手にピッケル、もう片手にトレッキングポールを持ちます。ビンソンマシフはテクニカルな場面がほとんどないため、ピッケルは長めでストック代わりになるものが適しています。

昨日と比べると斜度は緩く、歩きやすい斜面でした。ただ、外国人パーティとロープを繋いで歩くのはやはり慣れておらず、気を遣いながらの行動となりました。行動中は暑いぐらいで、ダウンスーツの上半身は脱いでいるか、前面を全開していました。

LCから見上げていたマウント・シン(4,661m)が、次第に真横に見えるようになってきました。その横にはタイリー(4,852m)も見えます。

手間がシン、奥がタイリー

ビンソンマシフ、タイリー、シンはいずれもエルワース山脈に連なって聳え立っています。タイリーやシンは下の方からも見えていましたが、ハイキャンプを出発してから2時間ほど経った頃でしょうか、ようやくビンソンマシフの姿がはっきりと見えてきました。

左がビンソンマシフ

タイリーやシンが険しい山容なのに対し、ビンソンマシフはどっしりとした、包み込むような山容をしています。

振り返ると、どこまでも続く白の世界。その中に、点在するように突き出した山々が見えます。世界中を探しても、ここでしか見られないのではないかと思うほど、不思議で美しい景色でした。

薄い酸素濃度の影響で呼吸は苦しいものの、体調は良好でした。景色を楽しみながら登り続けること約7時間30分、ビンソンマシフ山頂直下に到着しました。ここでトレッキングポールを残置し、防寒対策を万全にして先へ進みます。

山頂直下

岩が飛び出した急な斜度を15分ほど登ると、山頂が50mほど先に見えました。岩場を慎重にトラバースしながら、山頂へと向かいます。

2026年1月6日 19時8分

南極大陸最高峰・ビンソンマシフの山頂に立ちました。

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