あとがき 〜この記録を閉じる前に〜

2025年11月末、急遽ビンソンマシフ登山が決定してからの時間は、精神的にも大変なもがありました。そこでいただいたご縁や機会を大切にしながら、大きな夢を実現することができました。
また、無事に山を下り、達成感と安堵に包まれていた時に届いたある知らせは、言葉にできない感情を残しました。周りの人々は登頂、下山で盛り上がっている中、一人嬉しさだけではなく、寂しさや戸惑い、そして胸の奥に沈んでいくような想いが、静かに重なっていきました。
それでも、この登山で得た体験や時間、そして山の中で感じたことは、紛れもなく自分自身の一部です。
この複雑な気持ちを抱えたままではありますが、まずは今回の登山の記録を書き上げることにしました。
それが今の自分にできる、ひとつの区切りであり、向き合い方なのだと感じました。
ビンソンマシフ登山は「難しくない」と語られることが多い山です。たしかに技術的にはそうかもしれません。しかし、私にとってはこれまでの登山経験の中で、最も過酷で、最もしんどい登山となりました。
私自身の準備、経験、力不足と言ってしまえばそれまでですが、登山をされる方ならご理解いただけると思いますが、どんな山であっても、気象条件ひとつで難易度や厳しさは大きく変わります。
南極という特殊な環境下では、その影響を強く実感させられました。
また今回、私にとって初めて外国人メンバーとパーティを組んで登る経験でもありました。体格も登るペースも異なり、これまでとは違った緊張感がありました。
ビンソンマシフに挑むメンバーは、世界各地の名だたる山々を登ってきた強者ばかりで、自己主張、感情表現も強い一面があり、小さなケンカも起きました。
今回、彼らと行動を共にできたことは、大きな刺激であり、貴重な学びとなりました。

この体験が自分にとって何を意味しているのか、その答えがはっきりと分かるのは、まだもう少し先のことになる気がしています。
今はただ、支えてくださった多くの方々への感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。
2026.1.10 佐々木 司


